コラム

藤原道生のスポーツマンシップ講座 最終回

ポジティブな言葉で話そう

(2018年3月22日号掲載)

アメリカのスポーツの現場では、よく「ペップトーク」が用いられています。ペップとは「元気・活気」という意味。試合前、監督が選手たちに投げかける短い激励の言葉のことです。

ペップトークを展開する上で最も大切なのは、「ポジティ語(ポジティブな言葉)を使う」ことです。私は選手と話す時に、練習中でも試合中でもポジティ語のみ使うように心がけています。

例えば、選手たちに向かって「ミスをするな」「こんなことしていたら負けるぞ」といった言葉を投げかける指導者がいたとします。これらは「○○をしてはいけない」というネガティブな表現の言葉(ネガティ語)です。

日本語は目的語が先にきて、あとから打消しの言葉が続きます。そのため、監督が「ミスをするな」と言うと、選手たちの頭には「ミスをする」という映像が思い浮かびます。イメージの世界には打ち消し機能がありません。そのため、ネガティ語によるコミュニケーションは、ネガティブなイメージをもたらし、ネガティブな結果に終わることが多くなります。

このような理由から、選手とのコミュニケーションでは、「してほしい事」をシンプルに伝えるようにしています。これは選手同士の会話でも同じことです。「廊下を走るな」ではなく「廊下を歩こう」。「こんなトスは打てない」ではなく「ここにトスしてほしい」。ペップトークの世界では、これを「してほしい変換」と呼びます。

ポジティブな言葉を自然に使いこなすには、普段から相手を尊重する心、つまりリスペクトの精神が必要です。ポジティブな言葉を使うことも、リスペクトの精神を持つことも、普段からのトレーニングが必要です。

スポーツマンシップは、あらゆる分野に活用できる人材育成ツールです。ビジネスの世界でも政治の世界でも、自分の役割をきちんと果たし、他者をリスペクトしながら、その人たちと力を合わせてベストゲームを創ろうする心構えはまさにスポーツマンシップといえます。

その時に必要なリスペクトの精神を育むツールが、ペップトークであると思います。コミュニケーションが変われば人が変わり、社会が変わっていくと信じています。