健康

格言で学ぶ漢方-30

血の道症

(2017年2月23日号掲載)

江戸時代から治されてきた、女性特有の病。

体の調子がなんとなく悪い
玉嶋貞宏 院長
玉嶋血液内科
漢方診療所

玉嶋貞宏 院長
1958年、兵庫県生まれ。浜松医科大学卒。共立湖西総合病院、聖隷浜松病院を経て2012年に開業。日本血液学会認定血液専門医・日本東洋医学会認定漢方専門医
浜松市中区住吉1-24-1NTT住吉ビル4F
TEL.053-412-0100

漢方には「血の道症」という、女性特有の症状を表す言葉があります。これは月経や妊娠、産後、更年期など、女性ホルモンが変動することによって現れる症状のことです。庶民にも使われるようになったのは江戸時代からのようです。

具体的な症状はさまざまです。倦怠感やほてり、めまい、息切れ、中には肩こりが起こる人もいます。気分がイライラしたり、落ち込んだりするなど精神面に現れることもあります。はっきりとしない症状のため、明確な治療法がなく、患者さんにとっては「何となく調子が悪い状態」が続くことになります。

漢方では右記のような症状を、血の不足、血の巡りの悪化などによって起こると考えています。月経がある女性は、血の巡りが滞りやすく、血とともに体を巡る気、水の巡りも滞りやすいといえます。出産、更年期はもちろんですが、冷えやストレスなどによっても気血の巡りが滞るため、さまざまな体調不調が起こります。

「血の道症」の患者さんには気血を補ったり、気血の巡りを改善させたりする漢方薬を処方して症状軽減を図ります。五臓六腑の働きを考えた処方を行うと、さらに治療効果が高まります。市販薬の中にも生薬を用いて「血の道症」に有効なものが昔からあります。

幕末から明治にかけての名医に浅田宗伯という漢方医がいました。浅田宗伯が「血の道症」に良く効くことから命名した漢方薬に女神散があります。「めがみさん」とは読まず、「にょしんさん」と読みます。もとは安栄湯という漢方薬で、戦地の軍人の精神症状に用いたものでした。不思議ですね。

女性は、男性に比べて感覚が鋭く、周囲の影響を受けやすい傾向にあります。気血の巡りも悪くなりやすく、いろいろな症状が出てきます。「血の道症」は西洋医学では使わない言葉ですが、女性特有の症状を説明しやすい言葉ですね。