特集

天浜線 人と時代をつなぐ 花のリレー・プロジェクト

(2019年7月18日号掲載)

懐かしい風景や風光明媚な浜名湖を巡りながら、カタンコトンと走り、地域の人々に長く親しまれている通称「天浜線」、天竜浜名湖鉄道。いま、その沿線を市民の皆さんが協力し合って草を刈り、四季折々の花で彩る活動が始まっています。どんどん広がっていく、「天浜線 人と時代をつなぐ花のリレー・プロジェクト」について、プロジェクトを舞台裏で支える浜松いわた信用金庫の米澤浩祐さんと伊藤文俊さん、はままつフラワーパーク理事長の塚本こなみさんに伺いました。

伊藤文俊さん

浜松いわた信用金庫 SDGs推進部付。天竜浜名湖鉄道株式会社 地域連携センター長。JTCC認定 観光プランナー。

塚本こなみさん

はままつフラワーパーク理事長。日本初の女性樹木医。「花のリレー・プロジェクト」にプロデューサーとして携わる。

米澤浩祐さん

浜松いわた信用金庫 SDGs推進部 地域貢献課 課長。JTCC認定観光プランナー。

SDGs推進部=国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」を推進する部署。

私たちのまちを私たちの手で美しく、元気に!

「浜松いわた信用金庫」「天竜浜名湖鉄道」「はままつフラワーパーク」、3つの企業母体が、地域に暮らす皆さんと一緒に天竜浜名湖鉄道の沿線に花を植えることで、地域の活性化を目指すプロジェクトが約半年の準備期間を経て2018年にスタート。「平成30年度 地方創生に資する金融機関等の『特徴的な取組事例』33選」として認定、表彰されました。

このプロジェクトは、アダプト・プログラムの精神を取り入れ、天竜浜名湖鉄道沿線の定められた区画を企業や学校・団体・サークル・市民の皆さんに開放し、花の苗を植えて育て、定期的・継続的に清掃や美化活動を行っていただくものです。

天浜線沿線の風景が季節ごとに美しく移り変わるよう、市民の手で花を植えて育てていく「天浜線人と時代をつなぐ 花のリレー・プロジェクト」が、2018年からスタートし、この春から本格的に始動。地域の活性化を目指して、「アダプト・プログラム」という方式で市民と一緒に進めています。

沿線約20か所を植栽候補地とし、沿線6市町の70団体以上が参加。天浜線を舞台にみんなの手で花を咲かせ、観光客に見てもらい、また訪れたくなる、ずっと住み続けたくなる地域にしていこうという、全国でもまれなロマンあふれる事業についてご紹介しましょう。

心ひとつに天浜線に花を植える!

掛川駅から天竜二俣駅、そして、浜名湖をぐるりと巡り新所原まで走る全長67㎞の天浜線は、のどかな田園風景やみかん畑、間近に眺める浜名湖と続く、風光明媚な地域を走っています。また、駅舎が国の登録有形文化財になっていたり、駅舎自体がレストランやカフェ、ソバ屋になっていたり、最近では一日一組限定のペンションもオープンするなど、魅力的なスポットも登場しています。ところが通勤・通学の利用が主で、観光路線としてはあまり知られていません。

米澤さんと伊藤さんは、プロジェクトを進めるにあたり、菜の花列車で有名な千葉県の『いすみ鉄道』の取り組みをはじめ、各地の事例を調べました。特に花について知識がないので、困った二人は、はままつフラワーパーク理事長の塚本こなみさんを訪ね、「何を植えたらいいでしょうか」と相談。

塚本さんから、「秋にラッパ水仙を植えてはどうですか」というアドバイスを受け、そのまま種苗屋さんに「ラッパ水仙の球根をください」と買いに行ったものの、断られてしまいました。「まだ暑い時期でしたからですよね。それでもこのお二人がとにかく一生懸命なんです。その熱意に押されて私も放っておけず、プロジェクトのプランを引き受けることにしました」

その塚本さんから、はままつフラワーパークのスマイルガーデンも手掛けている、英国園芸研究家の吉谷桂子さんを紹介してもらい、何とダブル・プロデュースが実現することに。当初は花のプランターを置く程度、と思っていた天竜浜名湖鉄道もその意図とプランを理解し、プロジェクトが動き出しました。

企業、団体、学校、市民が沿線を分担。地域一丸となって未来へ

心強いプロデューサーが加わり、植栽プランは着々と進行。塚本さんは「いつ訪れても、全線どこかで季節の花が咲いている。そのシーンを走る列車の車窓から、駅舎から、沿線からと、いろいろなところから眺めて美しい花がつなぐリレー・プロジェクトにしよう」と考えました。

一方、米澤さんと伊藤さんも沿線の住民や企業、団体などの協力を得るために奔走していました。「最初は疑念を抱く人や乗り気ではない人もいたと思います。でも、黙々と草取りをしていると、だんだん挨拶をしてくれる人や一緒に手伝ってくれる人が増えてきたんです。うれしかったですね」と伊藤さん。長く続けていくためには、誰がどのように植えて、維持管理していくのか。それが課題でした。

そこで、アメリカから始まった「アダプト・プログラム」を導入。「イベントで終わらせるのではなく、長く続けることに意味がある」と考え、企業や団体、地域の花の会、学校などを訪ねて説明して回り、一定区間の苗植え、清掃などを引き受けてくれるアダプト・メンバーを増やしていきました。

「花で沿線をきれいにしていこうというプロジェクトの主旨が明確なので、皆さん協力的なんです」。みんなで区間を分担して作業すれば、地域一丸となり、広範囲で進めることができます。

年中、沿線のどこかで自分たちが植えた花が咲いていると認知されれば、観光客に見てもらえるという期待と喜びが住民たちの中に生まれます。観光客が増えれば、地元も潤います。そうなると、ここで何か事業を始めたいと都会から戻ってくる人も出てくるでしょう。あるいは、子どもの頃からアダプト・メンバーとして活動に携わっていれば、郷土愛が育まれ、将来も地域に住み続ける人が増えて、活気あるまちになっていくかもしれない―。答えを急ぐ現代では夢物語にも思える、時間のかかるプロジェクトですが、確実に参加する人たちが増えています。

花が好きという心が美しい景色をつくり地元の誇りにつながる

「花一輪の力は大きいもの。見る人も世話する人も、花から元気や勇気をもらっています。生きる力になるんですね」と塚本さん。さらに、「天浜線に乗った人が『わあ、きれい!』と喜び、賞賛することで、地元の人の間には自信と誇りが生まれます。そして、より花が好きになり、手を掛け心を掛けて花を育てるようになる。列車に乗る人も今度は降りてみようかしら、と通過型から滞在型へと変わるかもしれません。こうして素晴らしい循環が生まれ、次世代へと受け継がれていくことを願っています」と塚本さん。

スタートした花のリレー・プロジェクトは、これから点から線、そして面へ広がっていくことでしょう。あなたも仲間を誘って花づくりの魅力を感じてみませんか。

二俣本町駅

2019年2月4日、天竜高校の生徒をはじめ、地域のみなさまの協力により、「西洋あじさい」の植栽が行われました。開花時期は6月です。


敷地駅〜遠江一之宮駅

2019年3月9日、浜松いわた信用金庫の職員が主体となり、地元山田自治会や地域のみなさまの協力により、「ミソハギ」「スパニッシュフラメンコ」の植栽が行われました。ミソハギの開花時期は7〜9月、スパニッシュフラメンコは4月です。

常葉大学前

2018年11月23日、静岡第4、第5ロータリークラブをはじめ、地域のみなさまの協力により、「ヤマブキ」の植栽が行われました。開花時期は5〜6月です。

天竜二俣駅

2018年12月3日、英国園芸研究家である吉谷桂子氏プロデュースによる「ペレニアルガーデン」を製作しました。「野の花マット」や「宿根草」などを植栽し、4月から秋まで色とりどりの花が開花します。

アダプト・プログラムとは

アダプト(ADOPT)とは英語で「○○を養子にする」の意味。一定区画の公共の場所を養子に見立て、市民がわが子のように愛情をもって面倒をみる(=清掃美化を行い)ことを「アダプト・プログラム」といいます。

問い合わせ/浜松いわた信用金庫 SDGs推進部 地域貢献課 tel.053-401-1812